インプラントと抜歯

日本人の場合、抜歯をした段階でおびただしい濃胞(濃のかたまり)や不良肉芽(感染し た歯肉) に遭遇します。当然のことながらその除去に時間もかかりますし、骨の形もガタガ タで、結果として骨はやせ細って貧弱な状態になっているのです。

つまり、日本人の顎の骨が貧弱というのであれば、それは遺伝的な問題というよりも、受けた歯科治療のレベルの低さと、寿命の尽きた歯を長期間無意味に保存する歯科医の診断力の低さに由来するのではないでしょうか。歯科医が今日使っている診断基準にはまだ不確定要素が多く含まれており、残せると思った歯が残せないということも起こりえます。つまり、歯科医の診断は必ずしも絶対的なものとはいえないのです。

ですから、抜歯の基準は歯そのものではなく骨が残せるか否かで判断すべきで、仮に骨を残せないと診断された場合は速やかに抜歯すべきです。希望のない歯を無理に残すことが必ずしも良心的な歯科医療行為とはいえず、抜歯の時期を誤ったためにその後のインプラント治療を困難にするケースが多々あります。その意味でも、戦略的抜歯は、正しい歯科医療行為なのです。

インプラントのもつ高い信頼性が確認された今日、どの時期に抜歯をするかという判断は、歯科医に与えられた重要な任務です。それを実行するうえで既成概念にとらわれない高い診断力が求められているのではないでしょうか。