インプラントの副作用や効能

インプラント本体は、例えばペ ースメーカーと同じように医療機器などに分類されます。医療機器で重要なことの1つは、体内でどれだけ安定して長持ちするのかということです。最善の技術や最善のデバイス(医療機器)に裏づけられた処置をすることは歯科医学に身を置くものとしての特権ですが、その内容を正しく判断する知識と姿勢が不可欠なのです。

歯科医院へ来院される患者様には抜歯後に不都合な入れ歯が入っていたりします。その結 果としてさまざまな症状に悩まされ、それらの不快な症状を取り除くために治療を受けに来院されるのです。初めからインプラント治療を希望して来院されるわけではありません。

歯科医は、そのような患者様の状況を詳細に診断・分析したうえで、歯科医学分野の中心でベストな治療の1つとしてデンタルインプラントを選択します。その際重要なのは、治療から5年・10年後に患者様がどのような状態になっているのかを、さまざまな科学的データをもとに考えることであり、さらに重要なのは、患者様に対してクリアーな情報を説明することです。

もう1つ、私の10年の臨床経験からいえることは、「人間のやることは決して100%ではない」 ということです。このことを肝に銘じて、私は毎日治療にあたっています。治療の成功は知的に優れることが70%、手技的に優れることが30%といわれています。いかに手先が器用な先生でも、論文を読み研究をし、経験に裏打ちされたリサーチがしっかりなされていなければ成功しないのです。逆に、知的に優れていても器用でなければインプラント治療は成功しません。

外科医、特にインプラントロジストはストレスが多いため、なかには手術を早く簡単に終わらせたいと考えている人たちがいます。そのような状況を受けて、現在ではCTを撮影して手術をナビゲートするガイドをつくり、どんな先生でも一定の治療を可能にする技術が研究・開発されています。しかし、知的判断は必ず医師本人が決定しなければならないのです。たとえば、 昨年アメリカでは小型飛行機墜落事故で16人ものパイロ ットが亡くなったそうですが、その原因は、ガソリンのチェックを怠ったためだったそうです。歯科治療において はこのようなことが決して起こってはなりません。


インプラントの長さによる違い

ロングインプラントは、インプラントの先端ではほとんど動揺しません。その代わりにインプラント本体が撓むことによって、力を解放しているのです。ミディアムインプラントはその中間です。

一方、ショートインプラントは、インプラント全体が骨のなかで僅かに動揺して力を解放しています。つまり、建築物の基礎部分を動きやすくして構造体自身に負荷がかからないようにする耐震構造のような働きがショートインプラントでは起こるのです。

結論から述べますと、以前は長ければ長い程、インプラントは安定すると考えられてきました。しかし、現在では短いショートインプラントでも十分に噛む力に耐えることと、耐震構造のような働きをするので力学的にも有利なことが最新の論文で実証されているのです。

ショートインプラントは、複雑な骨移植であるサイナスリフトやソケットリフトをせずに治療することができるので、外科的な刺激や患者様のストレスを最小限にするだけではなく、術者のスト レスも解放してくれるのです。

さらに、骨移植をするよりも短期間で治療が可能で、しかも経済的です。
すべての患者様にショートインプラントが対応できるわけではありませんが、以前と比べると圧倒的にロングインプラントの使用頻度が少なくなり、ショートインプラントの使用頻度が増えてきているように、インプラントの表面性状や骨と の親和性、骨生理学や免疫学的の深い研究によって、術式や使用するインプラントの種類は変遷してきているのです。